うつ病=ストレスホルモンで前頭前野を障害
=ストレスホルモンによって前頭前野の障害
=前頭前野の萎縮
=治すには、前頭前野の活性化
うつ病になると、いわゆる「頭が回転しない」という自覚がある。前頭前野がすばやく回転しなくなっている。つらい感情が繰り返される出来事や不眠によって、ストレスホルモンが分泌され続けて、前頭前野のグリア細胞を減少させるためであることも、うつ病の精神症状が現われるもとであるようだ。
うつ病を治すためには、(A)新しいストレスホルモンを分泌させるような感情興奮をできるだけしずめることと、(B)そこなわれた前頭前野をもとどおり回復させることが必要である。
休職、退職などして休養していても、治らない人がいるのは、この2つがうまく効果を発揮しないからだろう。
うつ病は前頭前野の機能低下
うつ病には、種々の精神機能の障害が起きる。前頭前野や海馬の機能の障害が多い
ようである。前頭前野の機能は、思考、創造、他人とのコミュニケーション、意思決
定、感情の制御、行動の抑制、記憶のコントロール、意識注意の集中、注意の分散、
意欲(何かしらしようという意欲、目標ある行動へ)、自発性、ワーキングメモリな
どである。うつ病になると、こういう機能がそこなわれることがよく知られている。
子どもなら、成績が下がる、大人なら、仕事ができない。主婦が料理さえもできない
。以前に覚えた料理のメニューを思いだせない、どういう材料からどう作るかわから
なくなった。人と会話できない。
グルココルチコイドは脳血液関門を通過する
人は、ストレスを受けて、うつ病になる人がいる。ストレスホルモンが分泌されて、それが、脳に入り、前頭前野を傷つけるようである。ストレスホルモンは、脳血液関門を通過してしまう。
「コルチコステロンはアドレナリンが放出されない程度の穏やかなストレス刺激によっても副腎から血流に放出されます。」(1)
「コルチコステロンを訓練の後に注射すると、記憶の固定化を高めるという証拠が数多くあります。このホルモンは、脳血液関門を通過できるので容易に脳に入り、多くの脳部位で神経細胞のグルココルチコイド受容体(他の受容体とは違い、細胞の核に存在します。グルココルチコイドはコルチコステロンなどの総称です)を活性化させます。」(2)
「情動がかきたてられたりストレスを受けたりすると、副腎から2種類のストレスホルモンが放出されます。ストレスが弱いときは副腎皮質からグルココルチコイドだけが放出されます。ストレスが強いときには、それに加えて副腎髄質からアドレナリンも放出されます。
血流で脳内に運ばれたグルココルチコイドは、脳幹の孤束核や扁桃体外側基底核、あるいは大脳皮質で神経細胞に入り込み、グルココルチコイド受容体を活性化させ、記憶の固定化を増強します。」(3)
(注)
(1)「記憶と情動の脳科学」ジェームズ・L・マッカウ、講談社、 2006/4/20 、203頁。
- (2)同上、203頁。
- (3)同上、211頁。